「ジェームズ? 僕達友達だよねぇ?」
「…なんだ、リーマス。やぶからぼうに。当然じゃないか」
[[[或る朝の近景]]]
朝食を取る為、学校中が大広間に集まっていた。
山のように積まれたポテトやらフルーツやらパンやらを、各々好きなように皿に取り分けて、育ち盛りの旺盛な食欲を満たしているところだ。
「じゃあ、正直に応えてね?」
鳶色の瞳が学年首席の眼鏡少年をジっと見つめる。
わけがわからなったが、逆らうと後で面倒な事になりかねないので、彼は黙って頷いた。
「昨日、犬とヤっただろ」
――途端、隣で南瓜ジュースを啜っていたシリウスが、派手に、むせた。
彼はどうか今のヒトコトが、手紙や小包を運んで来た梟達の羽音によってかき消されて、周りの他の生徒には聞こえなかった事を切に祈ったが、多分儚い願いだろう。
現に、梟のバタバタ五月蝿い羽音は聞こえるのに、人のざわめきはピタリと止んでしまっている。
シリウス・ブラックは苦しそうに咳を繰り返していたし(ハンサムで通っている彼が鼻から南瓜ジュースを流しているところを、ジェームズ・ポッターとリーマス・ルーピンは男の情けで見なかった事にした)、ピーター・ペティグリューは自分の口に運ぼうとしてしていたプディングをローブに食べさせていた。
他にも、長テーブルのあちらこちらで、食器がひっくり返ったり食べ物が散乱したりしている。
言われた当の本人は全く動揺を見せず、ただ不思議そうに瞬きした後少々シニカルともとれる形に口端を歪めた。
「どうして、わかったんだ?」
――否定しろよぉぉぉ!!!!!!!!
その言葉を聞いた誰もが、心の中で絶叫した。
「だって、色っぽいもん」
誰も、恐ろしくて「何が?」とは訊けなかった。
ジェームズは黒糖パンを千切りながら、とろけるように微笑む。
「それは……なんというか、光栄だな」
シリウス・ブラックは、ポタージュに顔を突っ込んだ。
自ら墓穴を掘ってそこに飛び込んで蓋をしてしまいたい気分だった。
「うん、別にいいんだけどさ」
リーマスは呆れた様子でため息をついて、ローブのポケットから杖を引っ張り出す。その、目つきが据わっていた。
「僕らの安眠は、妨害しないでね?」
誰と誰の…などとは、聞くまでもないだろう。
突きつけられた杖先を涼しげに眺め、にっこり笑う。
“I will work”
――努力しようじゃねーだろーッ!!!!
墓穴のなかからツッコミを入れるが、相手が開心術でも持ち合わせていない限り、聞こえることはなかっただろう。
朝食後、ジェームズとリーマスが何も言わずに連れ立ってどこかへ行ってしまったが、それがかえって有難かった。
途方に暮れたピーターが、しつこく墓穴のフタを叩き始めるまで、シリウスは好きなだけポタージュに顔を沈めて現実から逃避していた。
もちろん、後日、
『ジェームズ・ポッターは獣相手に興奮する、妙な性癖を持っているらしい』
との噂がホグワーツ中に広まった。
しかし、そんな噂を本人は全く気にしなかった事は、言うまでもない。
[[[或る朝の近景]]]
■すみません、鼻から南瓜ジュースと男の情けを書きたかっただけです。
それぞれ何の動物を目指すかは決定してはいるもののアニメーガス成功はまだ、という事で…
これ…削除しようと思ったんですが何故か消せなくて(笑)