(1)触れたい


「ジェームズ」
「何」
「お前、髪の毛クシャクシャ」
「嫌味かい!? どーせ僕はサラサラストレート手触り最高の君の髪と違って癖っ毛だよっ」
「そんな事言ってねぇ!」
「言ったじゃないか!」

ムっとするジェームズ。憤慨するシリウス。
いつもなら、これから始まるのは意地の張り合い。

「違うッ、俺はお前のアタマがあまりにもクシャクシャだから…」
「ホラやっぱり言ってる」
「言ってねー!! 俺はっ! だから、そのー、なんだ」

顔が赤いのは怒りの所為かそれとも別の理由なのか。
逸らす目線がとても不自然。

「だから何」

2人とも気が長い方じゃない。イライラを隠せない。

「クシャクシャだから、俺がちゃんとしてやろーかなぁって!」
「…はぁ?」

毎日はねるに任せたこの髪型だ。
どうして今日に限ってそんな事言い出すのやら。










(2)遠くまで


お前何へばってんの。
日差しが暑い? 頭から熱を吸収する?
んなの俺だってそーだよ。同じ黒髪なんだから。
条件は一緒。

とっとと立て。そして歩け。

で、店を見つけて帽子を買うぞ。
その前に冷たい飲み物?
ハイハイ奢ってやるから。

異国のマグルの街を旅したいなんて言い出したのはお前だろ?
しっかりしろよな。

つーかなんでクィディッチのエースのお前がダウンしてて、蝶よ花よと育てられた深窓の御令息の俺がピンピンしてんだよ。

…テメー、甘えてるだけか!?
逃げんな!荷物持て!!馬鹿野郎!










(3)聞いてよ


「大体シリウスはさ、やればできるんだよ! やれば、ね!」

日曜日の図書室に立て篭もっているのは複数出された宿題を仕上げる為。
提出期限はもう間近。まだまだ間に合うはずだったのに。

「ジェームズ声でかい」
「君がやらないからだろっ!」

サボリ。悪戯。無断外出に無断外泊。彼女をとっかえひっかえ。
同じ相手と二度いるのを見た例がない。
最近のシリウスの素行は悪化の一途を辿っている。
ジェームズも人の事を言えた義理ではないのだが。

「もう少し落ち着けよ。次はもう手伝わないぞ」
「……誰も頼んでねー」
「何か言った!?」
「ジェームズ声でかいって言った」
「そうは聞こえなかったな。頼まれてもないのに手伝って悪かったよ!」

こんなシリウスをほうっておけるわけがない。

「聞こえてるじゃん。ジェームズ、声でかいってば」
「それ以外言う事ないのか君はっ!?」
「だーかーら、声でかいっての!! ここ図書室だぞッ?」

「その通りですね。Mr.ブラック、Mr.ポッター…図書室では、静かになさい」










(4)泣きたい


 
冷たい手とは裏腹に燃え滾る眼差しが忘れられない。

 ――憎い憎い

俺の人間性を否定する声が迸る。

 ――悪い子悪い子

血走る瞳に窒息死寸前の俺の間抜け面が映ってる。

 ――無かった事にすればいい無かったことに

こっちもあんたらを無かった事にしてーよ。



 ――どうしてお前なんか産んだりしたのかしら――?



むしろ俺が聞きたいっての。

そっちで勝手に子作りして思い通りにならなきゃ存在抹消かよ。
そりゃまた素晴しい教育ですこと。

認めろなんて言わねーよ。
ほっといてくれ。それだけでいい。

あんたみたいな女の腹から出てきたのかと思うと、俺だって心底虫唾が走るんだから……。



「ほっといてくれ」
「突然またどうして?」

耳聡い奴め。変な好奇心出すな。

「お前がいると騒がしい」

背中くっつけて座ってるんだ。暑苦しいし落ち着かない。


「じゃ、黙ってるからここにいる」
「どっか行け」
「嫌だ。ここにいる」
「……」
「ここにいるよ、シリウス」


「ほっといてくれ」





あと、絶対こっち見るな。










(5)好きだよ

 
「ジェームズ、ちょっと眼鏡貸して」
「いいけど、すぐ返せよ」

口づけを交わすなら邪魔な物はないに越した事はない。


■君に言いたい5のお題。
http://id11.fm-p.jp/1/melancholic9/
『メランコリック9』様

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